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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 二十六
傍目には、どこにでもいそうな普通のおじさん。
だがこのおじさん、凄腕の探偵なのだそうだ。

と言っても、稼業は探偵ではない。
ただ、警察は幾度も捜査協力を依頼に来ているのだという。

ちなみに推理小説によくある通り、元刑事だ。

俺は先輩刑事について、初めて「おじさん」の元へ来た。
「ふーん、随分若いのが来たね」
暖炉に置いた植木をいじりながら、おじさんは言う。

「今年入ったばかりです」
「よろしくお願いします」
先輩の紹介に合わせ、俺は慌てて頭を下げた。
おじさんは、この部屋に入った時からずっと暖炉の植木をいじり続けている。
だからおじさんは俺の顔も知らないはずなのだが。
どうして俺が若い、と気づいたのだろうか。

「刑事に必要なのはな、直感だよ」
「あと思いつき。閃きだ」
それから体力だの何だのが必要になってくる。

おじさんは相変わらず暖炉に顔を入れて植木を動かしながら言う。

きっと、長い刑事生活の中で実感したことなのだろう。
俺は黙って聴いていた。

「で、おじさん、この事件なんですけど……」
先輩が話を切り替え、資料を差し出す。

暴力団員を兄に持ち、売春グループの元締めだった女子高生が殺された。
貢いでいたホスト、最近切れたという男、兄の友人である暴力団員。
売春で性病を感染させられた友人、言いがかりをつけられ脅された知人。
主に容疑が掛かった人間の交友関係まで調べると、容疑者は多岐に渡った。

「お前はどう思う?」
おじさんは資料を一瞥すると、先輩と、そして俺に聞いた。

「自分はこのホステスだと思います」
先輩は被害者が貢いでいたホストの、愛人であった女を挙げた。
女は日頃から、ホストが話題に出す被害者の事を妬ましく思っていたという。

「お前は」
おじさんが俺に意見を求める。
自信ないんだけどなぁ……。
「母親、か父親、だと思います」
後ろに「何となく、ですが」と小声でそっと付け足した。

「いい目しとるね。第六感がちゃんと働いとる」
おじさんは、初めて俺と正対して言った。

隣で先輩が驚く。
おじさんは続けた。
「母親が実行犯だろう。父親が指示に回った。だが共犯だ」
「高校生を川まで運んで八つ裂きにするなんて、女性の力じゃ無理だ」


「後は自分らで調べな。アリバイとか言うのは好きになれん」
「はっ!」
ふい、とおじさんは背を向けると、暖炉の近くにあったソファに座った。


そして調べた結果。
本当に犯人は両親だった。
親の名前で深夜徘徊を繰り返し、妊娠までした子供が許せなかったのだという。
「あんなのを生み出したのは私達の責任です」
「だから私達が始末しなければ……」
取り調べの際、母親はそう語ったという。


完。
すみません不手際で二十五のログ取り損ねましたorz
おじさん・第六感・暖炉でした。
ええと久々すぎる件。

刑事がこれで良いのかと思いつつ、でもお題が第六感だったのでこんな超能力捜査になりました。
現職の皆様方すみません。
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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