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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 二十一
旧街道沿いに残る、昔の旅館……旅籠。
俺は、当時からそのまま営業を続けているという、とある旅籠に宿泊する事になった。

ちなみに俺は、史跡を主に紹介する旅行雑誌の編集を仕事にしている。
その旅籠の周りには、史跡が多く残っているのだ。

昔賑わった、というがさして大きくもないその旅館……ではなく、旅籠。
俺は八畳の和室に荷物を置くと、貴重品だけを持って外に出た。

「風呂、どこだろう」
「お風呂は近くの温泉を使うそうですよ」
きょろきょろと辺りを見渡す俺を見かねたのだろう。
一人の男性が声を掛けてきた。

「ああ、ありがとうございます。……温泉って?」
「近くに源泉があるんですよ。だからお風呂がないんですって」
にこやかに笑う男性は、俺より少し年下に見えた。
一人旅が多いのだろうか、初対面の俺に親切に解説をする。
ほー。と俺が感心したような声を出すと、何も知らないと見たのだろう。
「良かったら一緒に入りに行きますか?」
実際、事前知識がほとんどないのは事実だ。
俺はありがたくその言葉に甘えさせてもらった。


男二人、ほっこりと温まった。
説明によると、混ぜ湯をせず源泉を冷まして適温を保っているのだそうだ。
「はー、良い湯だったな」
「ですね。温泉にしては適温でした」
男は、硬質そうな髪をドライヤーで乾かしながら言う。

「ドライヤー使うんだなー」
「はい。こうしないと乾かなくて枕濡らしちゃうんですよ」
枕が濡れると旅館の方に迷惑ですしね、と男は笑った。

「なぁ、明日さ、旅籠に泊まった感想聞かせてくれないかな」
「?良いですけど……」
きょとん、とした顔の男に、俺は口頭で説明する。
旅雑誌の編集をしていること。
今回、旅籠をメインに扱うこと。
その記事にコメントを使わせてほしい、と。

「へー、雑誌編集の方なんだ。良いですね」
男は名刺もない俺の説明をすんなりと聞き入れ、感心したように声を上げた。
「あ、俺インタビューみたいなのだと色々言い忘れちゃうんで、逐一コメント出すとかでも良いですか?」
「ああ、良いよ」

明後日まで泊まるという男と無事に約束を取り付けた俺は。
旅館に帰ると、自室でゆっくりと記事の構想を練り始めた。



完。
お題はドライヤー・旅籠・コメントでした。
え、コメント?とか思ったのですが、利用者の感想とか女将のお薦めポイントとかもコメントって言いますよね。
毎回キーワードを一つ検索して、それを軸に話を組み立てている気がします。
今回だと旅籠がそれです。wikiたんこういう時は助かる。

主人公の相手役は異性になりやすいので、今回は同性にしてみました。
ドライヤーが割と自然に出せたので結果オーライですw
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プロフィール
書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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