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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 十三
私は、普通の女子高生。
ちょっと女の先輩に憧れるだけの。
ごくごく普通の、高校生だ。

ある日。
先輩が、鞄の他に、本を持って登校された。
おそらく通学の電車内で読まれていたのだろう。
だが、注目すべき点はそこではない。
その持っていた本にカバーが掛けられていたこと、だ。
本屋で本を買った時についてくる、紙製のものではない。
おそらく手作りだろうと思われる、布でできたブックカバーだ。

「誰にもらったんだと思う?あのブックカバー」
私は級友に話を振った。
「さぁ……。仲のいい後輩でもいるんじゃない?」
すげない友人の言葉に、私はがっくりと肩を落とす。
「仲の良い後輩か……そりゃ一人や二人ぐらいいるわよね」
「どうせ私なんていいとこストーカー紛いの背景だもんね……」
級友へ向けたはずの言葉は、すぐにぼやきに変わる。

先輩に憧れる、でも話しかける勇気なんて持てない。
そんな中途半端な人間だから、私は。

けれど。
神様だか仏様だかご先祖様だか精霊だか幽霊だか。
なんだかよく分からない謎の力が、私に味方してくれた。

お昼に繰り広げられるパン争奪戦で、見事目的のものを手にした私は、精算所に向かった。
「……先輩?」
「……はい?」
前に並んでいたのは、かの先輩だった。
しかもパンをごろごろと抱えて。

「っと、すみません」
うっかり出た声が、呼び掛けたような形になってしまい、私は慌てて謝罪した。
先輩はくすりと笑うと「いいわよ、お構いなく」と返してくれた。
精算を済ませた先輩が列を出る。

私がお金を払い終わると……なぜか先輩が手ぶらで微笑んでいた。
「私に、何か用事でもありそうだったから」

「……アリガトウゴザイマス」


「ええと……大したことじゃないんですが……えっと」
「先輩、今日は本にカバーかけられていましたよね」
「普段はそういうの使われていないのに、どうしてかなって思って」
しどろもどろになりながら、内心ヒヤヒヤしながら、妙なところに冷や汗をかきながら。
それでも私は聞いた。
だって気になるんだもの。

「……ああ。今朝の本ね」
「あれはお友達から借りたのよ」
「だからあのカバーも友人の物」
「どう?疑問は解決したかしら」

先輩の顔が少し近づいて、私は見惚れてしまった。
「……あ、はい!」
「ありがとうございます」
慌てて返事と、謝礼を述べる。

「そう、なら良かったわ」
先輩。先輩はどうしてそんなに優しいんですか?
ただの後輩に。
名前も知らない一生徒に。

「また、気になることがあったら聞いてね」
「答えられる時は答えるから」
それじゃ、と先輩は行ってしまった。

……はい、先輩。
今度は、私の方から先輩に声を掛けたいです。
勇気、出しますから。
また、優しく聞いてください。


完。
普通・ブックカバー・ぼやきでした。
えええwとか思ったんですが、頑張ってみた。
ううん、普通じゃない。
某マリみて臭しかしませんねすみません。
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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