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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 十二
私達は、陸上部の強化合宿に来ていた。
「よし、なかなか良い調子ね」
私は選手達のスコアを整理しながら一人呟く。
ちなみにこんな事をやっているところからお分かりのように、私は選手ではない。
マネージャーだ。
ちなみに陸上には競歩・マラソン・リレー・棒高跳びなど、いくつもの競技があるが、私は走り高跳び専門のマネージャーである。
走り高跳び専門って随分と限定的かもしれないが、私が通う学校では圧倒的に人数が多く、また成績も良い。

人数が多いから成績上位者が出るのか、成績上位者に憧れて人数が増えるのかは定かではないが。

夏の高地練習も今日で一週間。
部のメンバーも全員、成績が安定してきたようだ。

さて、と私はスコアを片付けて一つ、伸びをした。
明日は最終。ホテルを離れて帰る準備をしておかないと。


翌日。
部員達からはぼやきが漏れていた。
「バスが手配出来なかっただぁ?」
「す、すまん……。バス会社の不手際でな」
「えーと、路線バスを使って帰ることに……なったんだ」
先生が大汗をかきながらしどろもどろに説明をする。
一昨日、他の陸上部員が大学生と合同練習を行うため、先にこのホテルを発った。
一部が残り、大半が帰るという辺りで連絡ミスが生じたのだろうか。

不満を言い続けても仕方がない。
私達は午前中いっぱいまで行う予定だった練習を途中までで切り上げ、路線バスに乗った。
「まぁ座れたから良いや」
「おーだりぃ。寝よ寝よ」
車内は私達走り高跳びのメンバー以外いない。
部員たちは鞄を降ろすと思い思いの座席に座った。

「マネージャー、座らなくて大丈夫?」
「大丈夫よ。さすがに鞄は下ろすけど」
部長の気遣いに、私は笑顔を返す。

あんまり、座りたくない気分なのよね……。

部長が気晴らしのゲームを始めた頃、私は一人呟いた。
座りたくない気分、というのも妙な感覚だと思うが。
実際そう感じたのだから仕方ない。

私は駅までの約二十分間、景色を眺めることにした。


「何かだりぃ……」
一人の部員がそう口にしたのは、もうすぐ駅に着こうかという頃。
「あー、何となく分かる。俺もー」
何かおかしい。
部員たちは全員ずっと座って、ほとんどが寝ていたはずだ。
疲れるはずのない状況で、なぜ。
「……部長は、どうですか?」
「認めたくはない、が……身体の力が抜けたような感覚だ」
「あと、頭痛がする」
「そう……ですか」
私は部員たちの状況を確認するように見渡して……。
何となく近くの窓を開けた。
「けほっ」
部長が大きな咳をする。
理由は分からないが、対処法は見つかった気がする。
私は急いで全ての窓を開けて回った。



「一酸化炭素中毒、ですか?」
ええ。と救急隊員の人が答える。
駅に着いてからすぐに119番通報をして事情を説明したところ。
酸素ボンベを積んだ救急車がやってきた。

幸い重症者はなく、私はとりあえず胸を撫で下ろした。
「マフラーに何か……何でしょうね。これが詰まっていました」
指差す先には、マフラーの中に黒っぽい詰め物。
排気口がいつの間にか塞がれ、行き場を失った排気ガスが車内に充満したらしい。
「さぁっすがマネージャー。助かったぁ」
「しっかりしてるよなぁ」
部員たちが口々に言う。
……褒めても何も出ないんだからねっ。

事件性があるため呼ばれた警察は、事情聴取をしたかったようだがそれは後日に回してもらった。
運転手さんに聞いた方が確実だと思うんだけどなぁ……。

そして、私達は。
改めて帰路に着いた。


完。
お題は走り高跳び・路線バス・一酸化炭素。
事故?一酸化炭素って何。
とか思いつつ、頑張って三つともねじ込んでみました。
運転手さんの自殺エンドにしようかと思ったのは内緒です。
きっと真昼間から飲んだくれた阿呆がやったんでしょう(ぇっ

マネージャーちゃんが立ちっ放しなのは、二酸化炭素は空気より重いので、一酸化炭素も同じじゃね?とか思ったからです。
一酸化炭素濃度は、0.16%で20分間で頭痛・めまい・吐き気、2時間で死亡。0.32%で5~10分間で頭痛・めまい、30分間で死亡らしいので、この辺のはず。
参考サイト:東京ガスhttp://eee.tokyo-gas.co.jp/safety/co.html
軽い一酸化炭素中毒で風邪に似た症状、脱力感や頭痛、目がチカチカしたり悪臭を感じたり、辺りも微妙に参考に。
……脱力感はもしやガスのせい?ああもういいy(ry
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プロフィール
書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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