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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 六
その日は、土砂降りの雨だった。
俺は車で、営業先から自宅までの道を走っていた。
かなりスピードを落としていたつもりだが、実は急いでいたのかもしれない。
目の前を何かが横切ったように見えて、俺は咄嗟にブレーキを踏んだ。

土砂降りの雨。
道路は水浸し。

「うっ……わああああああっ!」

俺は自損事故を起こした。
車はその場で丸一周して、ガードレールにぶつかって止まったのだ。

相変わらず視界は悪いが、周囲に人影がいないらしい。
それは俺に、一抹の安堵を与えた。
対人事故なんて、考えただけでも寒気がする。

「っと、さっきのやつっ」
俺はスーツも頭も、全身が濡れるのも構わず車のドアを開けた。
きょろきょろと見渡すが、猫も犬も亀も、死体はもちろん姿形も見当たらない。
全体が車のライトに反射してよく見えなかったが、ペットとして飼われるような小動物の類だと思う。
頭からぼとぼとと流れ落ちてくる水を袖で拭い、俺は捜索を諦めた。

運転席に戻ろうとして……なぜか助手席に行ってしまった俺の足に、ころん、と音がした。
缶である。
ビール。500ml缶だろうか。
トールサイズのビール缶が、一本ひしゃげていた。

「……え、まさか……」
俺はこんなゴミのために自損事故起こした訳……?
しかもこんなずぶ濡れになってるのに。
原因が、ただの缶?

俺はその推論に、もううなだれるしかなかった。
「帰ろ……」
俺はずぶ濡れのまま運転席に乗ると、上着を脱いでネクタイを解き。
改めて帰り道を急いだ。


完。
お題は「土砂降り、事故、缶」でした。
んー、中途半端!
と思いながら何とかしてみた。むぅ。
缶は近くにいた猫が転がしたとか、きっとそんなんです。
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プロフィール
書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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