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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 四
ずるり、ひょこ。ずるり、ひょこ。
片足を引き摺るような音が、後ろから迫る。
俺は、人ならざるモノが見える、体質だ。

何年か前に死んだ姉貴も、同じ血だった。
片足を引き摺るのは、足を亡くしたということ。
そして、死んでからまだそんなに経っていない。
そう、姉貴は教えてくれた。

姉貴の月命日のために、お供えに好物だった明太子を買った帰り。
これも何かの因果だろうか。

姉貴は言った。
足に限らず、命が尽きた時に身体の一部を亡くすと、そこに低級霊が絡みつくのだそうだ。
僅かながら魂が流れ出る場所に張り付き、魂を食って自らを成就させようとするらしい。
だが、霊になってからある程度の期間が過ぎると、彼らも自力で低級霊を祓えるそうだ。
そのある程度、という大雑把な期間は、人によって異なるらしいが。

もちろん、その取り憑かれている期間は、短ければ短いほどいい。

姉貴は言った。
あんたも見える立場にいるんだから、そういう人を見かけたら助けてあげなさい、と。
情けは人のためらず。いつか自分に還ってくるから。と。


「しゃーねーなー」
俺は、独り言にしては大きな声で溜め息を吐くと、後ろを振り返った。

片足を引き摺っていたのは、男の子だった。
引き摺っている左足よりも先に俺の目に入ってきたのは、顔だった。
右目が、欠けている。

子供の方が祓う力は弱いのに、足と目、低級霊二匹に絡みつかれてはさぞかし辛いだろう。

……足取りが重かったのは、二匹いたからだったのか。

「チビ、遅くなってごめんな」
勝手に大人だろうと推測していた俺は、かがんで子供を抱きしめると、一言謝った。
子供は力なげに、俺の腕の中でふるふると首を振った。
雰囲気から察するに死んでから一週間、いや、もう二週間は経っていそうなのに、まだ力が弱い。
俺は手で右目の、そして左足の低級霊を引き剥がす。

このままでは、多分もう一回絡みつかれるだろう。

俺は、覚悟を決めてもう一度強く子供を抱き締めた。

きょとん、としたあどけない子供の顔。
目を閉じて、額に口づける。
「~~~~~~~~~……」
姉貴の少し後に死んだ、祖父から教えてもらった文言を唱える。
どーでも良いが、これを唱えていると、明太子をツマミにお茶をすする姉貴の顔が思い浮かぶのは。
なんか場違いな気がする……。

唱え終わると、目には眩しい光が灯る。
光は二つに分かれ、子供の右目と、左足に吸い込まれていった。
しかしずっと頭にハテナ浮かべてるなぁ、このチビ……。


「ほら、これでもう怖い思いしなくて良いんだぞ」
「……ふぅん」
肩をぽんぽんと叩くと、子供は納得したようなしないような顔でそう答えた。
「……あのお化け、もう来ない?」
「ああ、来ないよ」
お化けって、お前もある意味お化けだろうが。
俺は胸中そう突っ込みを入れながら、子供の問いかけをできるだけ笑って肯定した。

「ばいばい、お兄ちゃん」
子供は去るべき時を知ったらしい。
くるりと回ると、手を振りながら来た道を帰っていった。



完。
お題は足音・消毒・明太子でした。
えええ、何この組み合わせwww
と最初に思った通り、はちゃめちゃな展開ですね。

ちゃんと使ったの、足音ぐらいな気がする……あわわ。
消毒は毒=低級霊。
明太子はもうオマケ扱いですねorz

てか三題噺で四本書いて、毎回お題の一個が扱い微妙な気がします。
ちゃんと生かしきれるように頑張ろう。
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プロフィール
書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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