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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 三十六
森の奥に入ると、二度と帰ってこられない。

「ねえ、やだよ!」

泣き叫ぶワタシを引きずって主人は歩く。
……ワタシの声なんて、聞こえる訳もない。
だってワタシ達は、人形なのだから。

森の奥に立つ、一本の大きな木。
そこは、ワタシ達人形の墓場。
人々に飽きられ、引退させられたワタシ達が眠る、終末の地。
安息の地などではない。
そこに待つのは、孤独と、空腹と、ひたすらの闇。

繋がれた糸を切られても嬉しくなんてなれない。
自由と引き換えに、ワタシ達は動く術を奪われる。
長く束縛された生活。
側にあったのは、不自由という名をした一時の栄華。
主人に捨てられて生きられる程、人形は強くもなくて。

脈々と息づく大樹の元で、ただ朽ちていくのを待つだけの時間。

受け入れるしかできないなら、せめて。
目を閉じて、過去を思い返そう。
現実を見なければ、絶望しないで済むかもしれない。


ワタシは、堅く瞳を閉じた。



完。
引退・人形・木の下でした。
人形と名乗っていますが、多分踊り子の奴隷です。
なんか歌詞にできそうだなぁと思ったので、敢えて台詞少なめにしてみました。

三十五は取り忘れたので欠番ですorz
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プロフィール
書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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