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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 十五
津波が起きた。
原因は外国で起きた地震。

海にほど近い学校に通っていたおれは、高台にある体育館に避難した。
先日行われた津波の避難訓練で、気持ちだけは準備万端だ。
あんな形式的な訓練でも、役立つことはあるのだと思った。
今度からは真面目にします、先生。

体育館には既にたくさんの人がいたが、両親含め、家族は誰も見つからなかった。
親父はまぁ仕方ない。県外に勤めているのだから。

問題は母と、妹だ。

体調を崩して学校を休んでいた妹を、母は無事に連れ出せたのだろうか。
体育館の目と鼻の先に建っている病院に行っていたのかもしれないけれど。
でも、もし。
もし家にいたら。
もし逃げるのが遅れていたら。

おれは知り合いが誰も見当たらない不安から、思考がよくない方へと向かっていた。
首を振って、耳を塞いで。
おれは頭をリセットして、もう一度周りを見渡した。

「ばあちゃん!?」

おれの目に飛び込んできたのは、ばあちゃんだった。
「ぼん。無事だったかい」
相変わらずゆったりとしたしゃべり方で、ばあちゃんはおれに答えた。
「うん。おれは」
「ばあちゃんも無事だったんだ」
おれの言葉に、ばあちゃんもうん、と頷く。

「ぼん、これ」
「ん?」
ばあちゃんが差し出したのは、小袋の干菓子だった。
パサパサの粉っぽい、でもものすごく甘いお菓子だ。
「ありがと」
「でもおれはいいや。妹見つけたらあげるよ」

おれは灰色の小袋を受け取ってポケットにしまう。
この干菓子は、妹の大好物だから。
「ああ、ほいじゃあもう一つあげるよ」
自分で見つけたらあげようと思っていたんだけどねぇ。
お兄ちゃんの方が見つけるのは得意だろう。
そう言って、ばあちゃんはもう一つ同じ小袋を差し出した。

「……ありがと。じゃあ今食べちゃう」
中に入っていた薄茶色の干菓子は、兄ちゃん早く見つけて。
そう叱る妹の声が聞こえた。



完。
津波・干菓子・準備万端でした。
干菓子は個人的好みで落雁をイメージw
津波がストレートすぎるwwww

あ、主人公の男の子はなんとなく小学生のつもりで書いていました←どうでもいいw
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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