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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 十六
業務用のプリンターで、午前中に終わった取引明細の控えを取る。
私のお昼前の日常だ。

最後の一枚を確認して、私は目を見張った。
「あらま、訂正印がないじゃない」
午前中最後の取引だったのだろう、ボールペンでぐりぐりと塗り潰された箇所に、訂正を証明する印鑑は押されていなかった。
「捨印もないし……仕方ないか」
私は明細に名前が記された同僚の元へ向かった。

が。
彼の席に当人はいない。
おそらく昼食を摂りに行ったのだろう。
ということは、お昼休憩が終わってからでないと捕まらない。

「はああ、面倒くさいなぁ……」
一応、複写の提出期限は今日いっぱい。
けれど、午後は忙しい部署から手伝いを頼まれている。
できれば通常業務は午前中に済ませておきたかった。

「どうしたんだ?」
「あ、先輩……」
後ろから声を掛けてくれたのは、くだんの同僚を監督する先輩だった。
「これ、訂正印欲しいんですけど……」
「ああ、そんなこと」
持っていた明細を見せると、先輩は同僚の机の中を探り始めた。
机の上を軽く見渡し、左側の引き出し、右側一段目の引き出しを開けて出てきたのは、訂正用の小さな印鑑。
「はい、これでよし」
ぽんぽんと朱肉をつけると、先輩は勝手に明細に判を押してしまった。

「良いんですか?そういう事しちゃって……」
「良いんだよ。おれの部下なんだし」
「それに見たところ、特に重要な訂正でもないし」

「現場は臨機応変。これ重要だよ」
テストに出るから覚えておくように、と先輩は人差し指を立てた。

「あはは、ありがとうございます」
私は笑って紙を受け取る。

「コピー終わったら、一緒にご飯行かない?どこでも良いんだけど」
「うーん、午後から他の部署行かなきゃいけないんですけど……テイクアウトでも良いですか?」
先輩のお誘いに、私は微妙にズレた了承。
断りたくはなかったけれど、のんびり並んでいる時間がないのもまた、厳然たる事実。

あー広報かぁ。大変だね、と気を悪くした風ではない先輩。
そういえば広報には先輩の知り合いがいると聞いたことがある。
何度か廊下で話しているのを、私も見たことがあった。

「うん、良いよ。どこかアテはある?」
「じゃあ先日できたハヤシライス屋さんで」
おっけー、と先輩は握りこぶしを上に突き上げた。



完。
うううん、一日に三本は無理でし√乙(、c゜、)ミバタリ
追記。
お題はプリンター・ハヤシライス・印鑑でした。
恋愛……かもしれないと思いながら書いていました。
しかし会社員の日常は分からんです。
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プロフィール
書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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