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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 四十八
「へっくしゅ!」
ぐすっ
「うぅ……。やっぱり空気清浄機買おう……」
私は今年、いや、今年度か。一人暮らしを始めた。
そしてもうすぐ一年。

私は、少し早い花粉症に悩まされていた。
まだいける、と頑張っていたのだが……あちこちの予報通り、今年のスギは強力だった。
何せ、「花粉症なんて罹る人いるんだー」と笑っていた友人が発症するほどなのだから。

あまり外に出たくないから空気清浄機も通信販売で購入しようと思っていたのだが、今の状態では注文から配送までの数日すら耐えられそうにない。
やむを得ず、私はマスク、サングラス、帽子にコートの完全防備で家を出た。

「ずみまぜん……」
近くにある割には行ったことがなかった家電量販店に着くと、私はちかくにいた店員を呼び止めた。
花粉で涙目の私には、天井から吊り下げられたコーナー名など読めるはずもない。
「はい、何でしょう?」
「……マンボー?」
空気清浄機の場所を聞くはずが、視界に映った名札に思わず目を奪われてしまった。
彼の名札には『マンボー』、その隣には魚のマンボウが可愛らしいタッチで描かれている。

「ああ、これは現在行われているキャンペーンです」
にっこり笑った親切な店員が何やら説明してくれたが、鼻づまりで窒息しそうになっていた私の耳にはあまり届かなかった。

「……というキャンペーンです」
「はあ。あの、ところで空気清浄機ってどこでしょうか……」
話の流れが変わりすぎて失礼だろうかとも思ったが、呼び止めた目的も果たさねば。
「空気清浄機でしたらこちらになります」
店員は気を悪くする風もなく(接客なら当たり前かもしれないが)コーナーまで案内してくれた。

持ち上げた時の軽さと機能の折り合いがついた橙色の機種を手に、私は店を出た。
……出た矢先。
猫のしっぽだろうか。ゆらんと揺れる毛の塊を私は見つけた。

「にゃんこ、」
ついいつもの癖で、私は猫を呼び止める。
ただ、普段と違ったのは、その猫がこちらを振り向き、寄ってきた事だ。

「おまえ、野良?」
頭を撫でながら問うた私に、猫は答えるようににゃおんと鳴く。
「……うちにおいで」
特別選んだ訳ではないが、私の住むマンションはペット可。
にゃおんと再び鳴いたその猫を、私は連れて帰る事に決めた。

「……名前……そうだ、『マンボー』で良い?」
足元にじゃれつく猫を靴先で構ってやりながら、私は問う。
猫は足元に擦り寄り、ゴロゴロと喉を鳴らすと。
またにゃおんと鳴いた。


完。
空気清浄機、マンボー、猫のしっぽでした。
久々に書きました。何ヶ月振りだ。
完結させる、が実はかすかな目標でしたw
猫可愛いよ猫。
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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