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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 三十!
「どーこ行ったんだろう、部長……」

園芸部に所属する私は、とある人を探して校内を歩いていた。
ちなみに園芸部、と言う名称だが、れっきとした委員会である。

今日の放課後、園芸部全体で園芸塔の手入れをする事が決まっていた。
校内各所に植えられる花を一括で育てる場所である。
私と部長の担当は睦月部屋。
各部屋には、月の異名が睦月から師走までつけられている。

今日の集合場所になっているその部屋の前に、部長は放課後二十分を経過しても現れないのだ。

「もー、校内にいるんじゃないのー?」
私はぐちぐちと独り言にしては大きな声で文句を言いながら三階を歩く。
教室、園芸塔、図書室、運動場と見て回ったが、全くいる気配がない。
下校したという可能性を考慮して靴箱も覗いたのだが、黒のローファーが乱雑に突っ込まれたままだった。

適当に歩き続けるうち、私は校舎の端に来ている事に気がついた。
それは、旧音楽室にして現音楽準備室……もとい物置き場の前。

♪♬♪♫♩~
「ん?」
低い、軽快な音楽が流れる。
ジャズだろうか。

楽器は……ピアノではなく、ドラムでもなく、ギターでもない。
ということはサックスだろうか。
ジャズに使われていそうな楽器を挙げて、そう、トランペットを忘れていた。
ただ、トランペットはもっと音が高かった気がするけれど。

「えいっ」
何となく誰が吹いているんだろう、と思い始めて、私は目の前の扉を開けた。
開けた瞬間、推定サックスの音が止む。
「……あれ、どした?」

「どしたって……ぶちょー……」


そう、推定サックスの奏者は部長だったのだ。
「……何やってんですか」
「何って、練習?」
いや、練習?じゃなくて。
私は頭を抱え、一旦話をリセットした。

「今日、園芸塔の手入れの日だって事、覚えてます?」
「あ……れ?今日だっけ」
きょとんとした顔の部長。本気で忘れていたらしい。
「今日ですよ」
きっぱりと言い放つと、部長はごめん、と一言謝った。

「もー、探し回ったんですからねー」
推定サックスを専用ケースに仕舞う部長に、私は文句を垂れた。
「あー、うん、悪い」
「何もない日はここでサックス吹いてるから」
今度はそうして、と部長は言うけれど。
「今度ってまた忘れる気ですか」
「うー……はい。ごめんなさい」
もう探させないでください、と言って、私達は音楽準備室を出た。


完。
お題は睦月・園芸・サックスでした。
月の異名より他の物が思い浮かびますむつきって。
オリジナル漫画「ラムネっとふぁんたじー(爆)」の話が頭の片隅にあったりなかったり。
サックスといえば小花美穂の漫画「アンダンテ」で主人公が吹いていましたね確か。
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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