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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 五十二
「ただいまー」
学校から帰った私は、キッチンに立つ姉に声を掛けた。
「おかえり」
ふわりと振り返った姉の声が返る。
「今日は……ってお寿司だよね」
「そう、お寿司よ。……忘れてた?」
からかいの意味を含みながらも、軽く咎めるような声。
「ううん、お寿司って事を忘れていただけ」
私は首を振って否定した。

私達の父と母──両親が、突然の死を迎えてから三年。
母は即死、父は病院に運ばれる救急車の中で絶命した。
ナイフか包丁か、刃物による殺人だった。
命の終わりを自覚した父が最期に遺した言葉は『……昨日の……寿司……』だった。
確かに昨日の夕ご飯はお寿司だったけれど。
それ以上の意味は分からないまま、私達姉妹は犯人の手掛かりを求めて両親の遺品を漁った。
預金通帳と共に見つかったのは『虎の巻』と表書きされた古い和綴じの本。
中に書かれていたのは、お寿司の作り方だった。
両親を殺した犯人も、その理由も、その本の意味も分からない。
ただ、月命日にはその本に載っていたお寿司を作るのが習慣になっていた。

いつか犯人を見つけた時。
このお寿司の意味も分かるのだろうか。

答えは、未来だけが知っている。


完。
お題は昨日、寿司、虎の巻でした。
……なんで殺人とかになったし。
ご飯を作る人を姉に設定した瞬間からですね。
ほんと、何があったんでしょうか、この両親。(どこまでも無責任)
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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