忍者ブログ
気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
[3202]  [3201]  [3200]  [3199]  [3198]  [3197]  [3196]  [3195]  [3194]  [3193]  [3192
ざっくざく > 文章 > 三題噺 五十四
ある国に、二人の兄弟がいた。
顔も髪の色も肌の色すら似ていない二人は、しかし仲が良かった。
料理家でバイオリニストという華やかな弟の陰に隠れて、大人しい兄は目立たなかった。
けれど。

料理番組で取材を申し込んだ私達は、それが外部の人間によって作り上げられた虚像であると知る。
「兄ちゃん、次の料理どうする?」
「今度品評会があるんだけど」

「……蛸」
弟の問いかけに、兄はぽつり一言。
「品評会のメインは蛸ですか」
私の確認の問いかけに、兄はこくりと頷いた。
「蛸かぁ。煮物にするとすごく生臭いんだよね」
弟の呟きを兄は首を振って否定し、近くのメモ用紙に何かを書き付ける。
小さいメモ用紙の半面では足りず、裏にも短く文字を書いて弟に渡す。
「……兄ちゃん、レシピはちゃんとしたノートに書いてってば……」
迷うことなく書き綴られたそのメモ用紙は、蛸を主題に据えたレシピであるらしい。

――そう、この兄弟は、兄がレシピと楽譜を書き、弟が料理を作り演奏するのだ。

「……ええと、どちらが主体なのでしょうか」
つい、思い浮かんだ疑問を口にする。
「僕らは二人で一つです。僕は新しい料理も新しい曲も作れないし、兄は料理を作れないし楽器も演奏できません」
昔からずっとそうでした。
――弟の言葉は続く。

僕が料理を作って、それを食べた兄が提案を示す。
出された改善策をまた僕が作って、兄が食べる。
その繰り返しです。

「人に理解できなくても、僕らはこのスタイルを変えられません」
そう言って笑った弟の顔は、それが心からの事実である事を雄弁に語っていた。



料理、兄弟、音楽です。
あんまり音楽が出せていませんね。うう。
最初は片方ずつ設定するつもりだったのですが、料理人と音楽家(演奏家)どちらも無口な人って似合いそうで。
だったら兄=構想する人、弟=実現する人にしてしまえとw
ちなみに血が繋がっていないという設定にしようかと思っていたのですが、出せませんでした……。
PR
【 この記事へコメント 】
名前
コメントタイトル
URL
本文
削除用パスワード
累計アクセス数
アクセスカウンター
レコメンド
プロフィール
書いている人:七海 和美
紹介:
更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
忍者ブログ [PR]