気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 五十六
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どきどきする。
今日から初めての共同生活が始まるのだ。
私は、念願だった第一志望の高校に合格し、一足先に寮生活が始まった。
全寮制ではないが、さすがに二時間半の通学距離は厳しかったから。
三月末、寒さも緩み、ようやく春めいてきた時期だった。
「106号室の人?」
後ろを振り向くと、ふんわりとした女の子がいた。
「えっと、106号室です」
受け取ったばかりの封筒を見ながら答える。
この人が同室なのだろうか。
「やっぱり。じゃあよろしくね」
ふんわりと笑う女の子が差し出した手を、私も握り返した。
「ねえ、レンタルスペース行ってみない?」
「うん、行く行く」
自室にとりあえず荷物を置いて、私達は寮内の探索に出た。
荷物の片づけなんていつでもできる。
だって、三年間この部屋で過ごすのだから。
私は、出会ったばかりの彼女といる事が、何より楽しく感じていた。
『蝋燭厳禁』
レンタルスペースと名付けられた、寮内のイベントを催す時に使われる部屋。
そこにあった、唯一の貼り紙である。
「……蝋燭って、普通は火気厳禁って書かない?」
「ライターもマッチもOKなのかな」
「ていうかすごい字……」
「だよね……」
『蝋燭』を漢字にするセンスもさることながら、筆で書かれたその貼り紙は、どこかおどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。
「あら、新入生?」
背後から掛かった声に振り向くと、三十代くらいだろうか、眼鏡を掛けた女性が立っていた。
「はい、今日寮に入りました」
「そう。寮内探検中ね」
「この部屋も含めて、寮内では蝋燭と百物語は厳禁だから」
案内の紙にも書いてあるから、ちゃんと読んでね、と付け足される。
「百物語?」
「って……怪談話の?」
全く予想もしなかった言葉に、つい聞き返す。
百物語、というと、蝋燭を百本灯して、怪談話が一つ終わる毎に一本ずつ消していくというアレだろうか。
「昔、寮のイベントで百物語をやったのよ、この部屋で」
「ちょうど百人いたから一人一話ずつ」
「自分が話し終えてから怖くなって、途中で部屋に帰った寮生が二人いたんだけどね」
「いなくなったの、その二人」
「部屋にも帰っていないし、玄関は閉まっているから外に出たはずはないのに」
「そんな事があったから、とりあえず百物語と蝋燭は禁止になりましたとさ」
「……はあ……」
じゃあ気をつけてね、と手を振った女性と分かれて部屋に戻る。
寮の利用規約が書かれた冊子には、確かに『百物語の実施及び蝋燭の使用を禁ず』と書かれてあった。
「すごい話があったんだね……」
「でも駄目って言われるとやりたくなるよね」
彼女の言葉に、ふふ、と笑う。
規則があれば破りたくなるのは人の性か、反抗期ゆえの反骨精神か。
「じゃあ夏にやろっか、百物語」
「うん、約束ね」
彼女に乗せられたなんて、この時は思いもよらなかった。
完。
蝋燭、共同生活、レンタルスペースでした。
眼鏡の女性が百物語の参加者で、主人公のルームメイトはいなくなった二人のうち片方の知り合いです。
彼女はちょっとだけ霊感あります。
という書かなかった裏設定があったり。
なのでレンタルスペースに行こうと言い出し、百物語の話に驚かず、挙げ句やってみようと言い出したのです。
……続編なんてありませんよ?多分。
三題噺のお題に百物語が出たら考えますがw
今日から初めての共同生活が始まるのだ。
私は、念願だった第一志望の高校に合格し、一足先に寮生活が始まった。
全寮制ではないが、さすがに二時間半の通学距離は厳しかったから。
三月末、寒さも緩み、ようやく春めいてきた時期だった。
「106号室の人?」
後ろを振り向くと、ふんわりとした女の子がいた。
「えっと、106号室です」
受け取ったばかりの封筒を見ながら答える。
この人が同室なのだろうか。
「やっぱり。じゃあよろしくね」
ふんわりと笑う女の子が差し出した手を、私も握り返した。
「ねえ、レンタルスペース行ってみない?」
「うん、行く行く」
自室にとりあえず荷物を置いて、私達は寮内の探索に出た。
荷物の片づけなんていつでもできる。
だって、三年間この部屋で過ごすのだから。
私は、出会ったばかりの彼女といる事が、何より楽しく感じていた。
『蝋燭厳禁』
レンタルスペースと名付けられた、寮内のイベントを催す時に使われる部屋。
そこにあった、唯一の貼り紙である。
「……蝋燭って、普通は火気厳禁って書かない?」
「ライターもマッチもOKなのかな」
「ていうかすごい字……」
「だよね……」
『蝋燭』を漢字にするセンスもさることながら、筆で書かれたその貼り紙は、どこかおどろおどろしい雰囲気を醸し出していた。
「あら、新入生?」
背後から掛かった声に振り向くと、三十代くらいだろうか、眼鏡を掛けた女性が立っていた。
「はい、今日寮に入りました」
「そう。寮内探検中ね」
「この部屋も含めて、寮内では蝋燭と百物語は厳禁だから」
案内の紙にも書いてあるから、ちゃんと読んでね、と付け足される。
「百物語?」
「って……怪談話の?」
全く予想もしなかった言葉に、つい聞き返す。
百物語、というと、蝋燭を百本灯して、怪談話が一つ終わる毎に一本ずつ消していくというアレだろうか。
「昔、寮のイベントで百物語をやったのよ、この部屋で」
「ちょうど百人いたから一人一話ずつ」
「自分が話し終えてから怖くなって、途中で部屋に帰った寮生が二人いたんだけどね」
「いなくなったの、その二人」
「部屋にも帰っていないし、玄関は閉まっているから外に出たはずはないのに」
「そんな事があったから、とりあえず百物語と蝋燭は禁止になりましたとさ」
「……はあ……」
じゃあ気をつけてね、と手を振った女性と分かれて部屋に戻る。
寮の利用規約が書かれた冊子には、確かに『百物語の実施及び蝋燭の使用を禁ず』と書かれてあった。
「すごい話があったんだね……」
「でも駄目って言われるとやりたくなるよね」
彼女の言葉に、ふふ、と笑う。
規則があれば破りたくなるのは人の性か、反抗期ゆえの反骨精神か。
「じゃあ夏にやろっか、百物語」
「うん、約束ね」
彼女に乗せられたなんて、この時は思いもよらなかった。
完。
蝋燭、共同生活、レンタルスペースでした。
眼鏡の女性が百物語の参加者で、主人公のルームメイトはいなくなった二人のうち片方の知り合いです。
彼女はちょっとだけ霊感あります。
という書かなかった裏設定があったり。
なのでレンタルスペースに行こうと言い出し、百物語の話に驚かず、挙げ句やってみようと言い出したのです。
……続編なんてありませんよ?多分。
三題噺のお題に百物語が出たら考えますがw
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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