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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
美術鑑賞からプログラムのコードまで、思いつくままに思いついた事を書いています。
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ざっくざく > 文章 > 三題噺 三十三
「上長、投げられる石がもうありません!」
投石器を担当する砲兵から、悲痛な声がする。
「その辺に転がっている梨を使え!食えんだろう」
とりあえず叫んで、私は投石器の方へ走った。

地面に転がる巨大梨に足が絡まる。
梨とは名ばかりの一抱えもある大きな果実は、水分が少なく、栄養もなく、到底食べられるものではない。

「砲兵!」
「あっ……上長」
慌てて敬礼を返すのは、先ほど指示を求めた砲兵ではなかった。
「二等兵、砲兵は」
二等兵は敬礼を解くと、黙って首を振った。
「……そうか」

人が死ぬのは辛いが、だからといって悼んでいる暇はない。
私は梨を拾うと、沈んでいる二等兵に投げた。
「ここで死んでは、奴も浮かばれん」
「はっ!」
言葉の意図するところを察したのだろう。
二等兵は空いていた投石器に梨を充填した。


そして私は。
……立ちくらみを起こした。
目の焦点が合わない。
ここは戦争の最前線。
体調管理には気をつけているつもりだったが。

私は立っていられなくなり、その場に崩れ落ちた。
「上長!」
工兵らしい声がする。

そうか、これは……。
辛うじて目を開けると、傍に来ていた衛生兵に手を振った。
「問題ない。久し振りの変体が来ただけだ」

変体。

それは、人の進化。

人生で五度、その現象は起きる。
三日間から一週間の半変体……さなぎの期間を経て、再び蘇る。
時期は定まらず、きっかけも何も解明されていない。
ただ、誰にでも起こる、生理現象だ。


「……そう、ですか。分かりました」
「では後方から指示を」
衛生兵の提案に頷くと、私は意識を失った。




完。
お題は変体・投石器・梨でした。
変態じゃなくて変体かー。
要するに芋虫がサナギになって蝶になるあれですか。
とか思ってたんですが。
うわひでえwwww(本日二回目)

階級はマイナーなのを使いたくてドイツ軍bywikiを参考にしました。
砲兵と衛生兵は同じ二等兵です。
上長は海軍の階級で、兵曹上長の略。
准尉と少尉の間にある上級准尉と同じらしいです。
これ陸軍じゃないかとか突っ込んではいけませんw
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書いている人:七海 和美
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更新少な目なサイトの1コンテンツだったはずが、独立コンテンツに。
PV数より共感が欲しい。
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