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気ままな一人暮らしの、ささやかな日常
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ざっくざく > 美術鑑賞 > 華ひらく皇室文化展

京都文化博物館で開催されている、 『華ひらく皇室文化 ー明治宮廷を彩る技と美ー 』 展に行きました。

同じ京都文化博物館で開催されていた他の特別展と常設展の感想もあります。

【目次】

  1. 初めに
  2. 特別展:1. 華ひらく皇室文化展
  3. 特別展:2. 書道作品展
  4. 特別展:3. 織物展
  5. 常設展:1. 祇園祭
  6. 常設展:2. 伝統と創生
  7. 特別展:4. 開館三十周年記念ポスター展
  8. 最後に

1. 初めに

『華ひらく皇室文化 ー明治宮廷を彩る技と美ー 』 は、各地で開催されている明治百五十周年記念のシリーズです。
そして、会場の京都文化博物館の、開館三十周年記念でもあるそうです。
開館時から今までに開催されたポスターの展示もありました。(後述)

国立博物館の友の会に入っているので、この京都文化博物館でも割引が適用されるのですが、よりにもよって有効期限の前日に忘れてしまってショックでした。
次は国立国際美術館で入会しようかな。

2. 特別展:1. 華ひらく皇室展


会場内は割と空いていました。
見やすかったー。

幸野 楳嶺ばいれいがいました ……!
円山四条派の末裔の日本画家で、竹内 栖鳳せいほうと上村 松園の師匠です。
占いで 「 画家としては今一つだが、弟子は大成する 」 と言われたのを信じて、画家としての道は諦めて指導者側に回ったため、弟子達が賞を獲ったりするとすごく喜んだ、というエピソードが残っています。
が、宮廷技芸員に選ばれているので、やっぱめちゃくちゃ腕良いんじゃん ……と名も知らぬ占い師の腕を疑いました。
まあ、弟子の一人が初代の文化勲章 受章者である竹内 栖鳳、というのは事実ですが。

平安神宮に奉納されたという英照皇后の遺品に、少し変わった下がり藤の紋が入れられていて驚きました。
京都にある浄土真宗派のお寺:本願寺の紋にそっくりなのです。
どうやら英照皇后の生家の紋だったようですが ……。

火鉢が漆塗りで不思議でした。
実家にある火鉢は陶器製なので、陶器製が標準だと思っていたのですが …… 漆の下は木なので焦げてしまいそうですよね。
皇室の方なら、入っている炭を火箸で動かすうち縁に当ててしまう、なんて事しませんか。

絵は少なめでしたが、藤堂 凌雲らの合作である ≪ 四季花鳥図屏風 ≫ は綺麗でした。

チラシにも載っていた、夜の正装のドレスであるロープデコルテが出展されていました。
チラシやポスターでは緋色なのに見たのは紫色という違いも気にはなりましたが(照明のせい?)何より身長が低くてびっくりしました。
身長140cm程でしょうか。150cmあるんでしょうか。

ボンボニエールと呼ばれる、記念式典毎に参列者に渡していた銀製の小物入れが多数出ていました。
魚雷など軍事関係のモチーフがちらほらあった事より、途中から兜など小物を入れる機能がなくなっている物が多くて不思議でした。
もはや小物入れではなくてただの置物ですよね ……。

出産の時に飾られたという、白一色で描かれた原在中の木製の衝立 ≪ 白絵松鶴図屏風 ≫が綺麗で、良くぞ残してくれた、と思いました。
出産は神聖なものであるため白で描かれた新しい屏風を用意しますが、産褥の穢れという側面もあるため、普通は生まれた後に全て処分してしまうそうです ……。
ちなみに京都会場で追加された作品との事。

京都で追加された作品では、他に明治天皇が幕末に描いたという ≪ 鉢植図 ≫が素朴な雰囲気でした。
明治天皇の発案という、果物のザボンの中身をくり抜き、外皮を乾かして作った菓子器が意外でした。
あと中原哲泉の ≪ 七宝下図 ≫も綺麗でした。

全国版に戻ります。
濤川なみかわ惣助の≪ 七宝貼込屏風 ≫ は焼物の七宝ではなく絵のようで凄かったです。
同じ作者による ≪ 富嶽図七宝額 ≫ をシカゴ万博に出品した時は、工芸部門ではなく絵画部門で展示されたという逸話もあるそうで。

食事用の陶器は派手でした ……。
料理を乗せる真ん中は白地というのは良いのですが、周りがこれなんて飾り皿ですかという花鳥画でした。
ちなみに出展されていた本物の飾り皿は白地ですらなく、もっと派手です。

≪ 色絵金彩花鳥文エッグスタンド ≫ はまだ綺麗だなと思えましたが、説明にある雀の絵が展示の裏側で見えないとは知らず、懸命に探してしまいました。
(絵葉書で知りました)
複数の作家の作品がありましたが、幹山 伝七の作品が一番綺麗でした。

大久保 利通らの、写真のように精密な銅版画もありました。
日本の紙幣印刷の基礎を築いた銅版画家、エドアルド・キヨッソーネの作品だそう。

出展されていた覚えはないのですが、図録に明治天皇に殉死した乃木 希典の刀が載っていて驚きました。
夫人が殉死した時に使った短刀が、明治天皇の買い上げ記念で制作されたと書いてあってもやもやしています。今。

さて、明治時代に発布された大日本帝国憲法下で、天皇陛下は政権の最上位であるはずです。
そのお住まいに、一種の中古住宅である江戸城を使うという話はどこから湧いて出てきたのでしょうか。

先日どこかの本で指摘されていてすごく納得したのですが、天皇陛下が忠臣とは到底言えない幕府将軍の旧居を流用するというのは不思議な気がします。
一応徳川家も天皇家の縁戚ではありますし、江戸城が焼失したためお住まいは明治宮殿という建物を新築したそうなのですが ……。

宮殿は太平洋戦争で焼失、同じ場所に現在の宮殿が建てられています。
その明治宮殿に使われた天井画の下絵が綺麗でした。
大広間の格天井に、柴田是真と次男の原画で百十二種類の植物の綴錦の絵が飾られていたそうです。

ちなみに歴史の教科書で習った鹿鳴館も、迎賓施設であった延遼館も、役目を終えたため取り壊したと書いてあってげんなりしました。
日本は地震が多いためか、建築物を数代先まで持たせるという発想がそもそもないのでしょうが、歴史的建造物も有名建築家の設計も、保存に掛かる費用だけを考えて潰すというのはおかしいと思います。
近現代の建築では、東京都中野にある故・黒川 紀章の設計である 『中銀カプセルタワー 』 も、今保存と交換のための署名活動が行われていますね。
神戸にある個人所有の名建築は、所有者が無関心なために保存もできず、朽ちるに任せてしまっていると聞きます。
有名建築家によるどこかの市役所も老朽化のため建て替えと聞いて心配です。

明治辺りだと、既に失われてしまった建築技術がありそうです。
神社の遷宮を代表例に、建て直す事で受け継がれる技術も多いですが、基本的に当時の技術は当時のままで残すべきだと思います。
…… なんて、新築が異様に好きな日本人に言っても無駄でしょうけれども。

この記事を書くために図録を開いたら、冒頭に全員のお印が載っていて舐めるように見てしまいました。
秋篠宮 悠仁様が高野槙というのは、お印が決まった時に南海電鉄で配っていたニュースを見たので覚えていますが、愛子様のゴヨウツツジは全く記憶にありません ……。
お生まれになった時のニュースははっきり覚えているのになぜだ。
どうやって決めているとかも知りたいです。
あと当然ながら、絢子様の降嫁先の苗字が載っていませんでした。

2. 特別展:2. 書道展

目当ての華ひらく皇室文化展以外にも、上階にて入場料無料の書道展と織物展が開催されていたので、ついでに見て来ました。
まずは書道展からです。
書道というか書は正直良さが全く分からないのですが、作品の横に、作者が自筆で名前、作品名、作者名、内容を書いた紙が貼り付けてありまして。
毛筆はショッピングモールでやっていそうなデザイン書体で巧拙が分かりませんが、当然ながら硬筆でも字は上手いんだな、と思ってしまいました。

金子みすゞや杜甫の漢詩、古典の文章から材を採った作品が並ぶ中に混じる、ポカリスエットのCMキャッチコピー。
作者は書道展グループの常任理事でした。

3. 特別展:3. 織物展


織物展は写真撮影が禁止でした。
自分ではたを織って作った物のようです。
語彙力が足りなくて表現できませんがすごい。

中でも白地に雪模様が描かれた着物がすごく綺麗で、「 写真を撮りたくなるんですけど禁止なんですよね ……」 と、ちょうど作品の前にいたスタッフさんに嘆いたら 「 私が作った作品なんで、こそっと写真撮って良いですよ〜」 と仰って頂けたのでこそっと撮らせて頂きました。

あと二枚程好みの作品がありまして。
うち一枚は同じ作者で、作品の前にInstagramやHPのURLが書かれた名刺のようなチラシのような紙があったのでありがたく頂きました。
作品集も眼福でした。


織物展らしく、会場の外には機織り機が置いてあり、お声掛け頂いたので体験もしました。
という、糸巻きをセットした木の棒を横から入れて横糸にします。
両足がペダルになっていて、足でペダルを踏んで杼を入れて、奥から糸を押して隙間を詰めて、もう片方のペダルを踏んで、と繰り返していると、頭が混乱してしまいました ……。
後で見た常設展示の映像の凄さを実感します。

4. 常設展:1. 祇園祭

常設展示はいくつかのコーナーに分かれていて、全く変わらない冒頭は飛ばしました。
まずは祇園祭の山鉾を一山ずつ紹介しているコーナー。
山鉾のモチーフに特に共通点はないのですね。
今回は八幡山はちまんやまで、町内で祀られてきた神社:八幡社がモチーフの山だそうです。

作品説明を兼ねたチラシで気になった、山鉾の後ろに飾られる見送みおくりという布の ≪ 波濤に飛龍文様 中国絹紋織 官服直し ≫ が見当たらず、出品一覧をよく見ると、『 後期 』 と書かれていてショックでした ……。
初めて知りましたが今は前期のようです。
後期は一月中旬までのようなので、次の特別展と一緒に行けるかなぁ。

そして、昔の山鉾巡行を描いた絵の解説に 『 この山は天災で山鉾が壊れて以来長らく休止していたが、平成二十八年に保存会が発足した 』 と紹介されていました。
もうすぐ復活予定だと思います。頑張れ。

5. 常設展:2. 伝統と創生

二つ目のコーナーは、『 京都文化力プロジェクト・明治150年記念:伝統と創生〜無形文化財保持者たちの作品展〜』 と称した、無形文化財保持者の作品展です。
そう言えば文化庁が京都に移転するのでしたね。
国語の教科書に載っていた、染色家の志村 ふくみが出ていて懐かしいです。
開花直前の桜の皮が一番綺麗に染まるという話を今もよく覚えています。

そして作品の記憶はないのに名前だけ覚えている陶芸家の富本 憲吉。
紹介を読んだところ、同郷の奈良県出身との事なので、小学校か中学校のどこかで紹介されていたのでしょうか。

元から好きで最近着たので、作品の中でもつい着物に目が行ってしまうのですが、作品の着物の丈はどうやって決めているのでしょうか……。
作家自身のサイズなのか、皇后陛下など、皇室の誰かに基準となる身長の方がいらっしゃるのか。
とりあえず和美には丈が短い気がする事に気付いたのでちょっとショックです。
追記。『女並』と呼ばれる標準寸法があり、衽巾おくみはばが4寸、前巾が6寸、後巾が7寸5分だそうです。
参考リンク:着物の寸法の決め方:美どり和裁

福田 喜重きじゅうという人の亀甲菱文様 刺繍着物が綺麗でした。
訪問着とかは派手過ぎて、一体どこに着ていくんだろうと不思議でした。

最後に、無形文化財保持者の方の一人:村上良子の、染めから織物を織るまでを追ったVTRが流れていまして。
二十二分もあるようなので、途中から途中まで見ました。

どんぐりのかさと実で別の灰色に染まるとか(かさの方が濃い灰色に染まるそう)、定着液を通して化学反応を起こさないと染まらない染料があるとか、植物染料にこだわっているのに華やかな色が出るとか、色々凄かったのですが。
機織りの場面はを縦糸と縦糸との間に投げるように滑らせていて、先程上階の特別展で体験したのを思い出しながら、当然ですがプロの手つきは違うなぁと思いました。

特別展:4. 開館三十周年記念ポスター展

開館周年記念や閉館記念など、時々開催されている、過去に開催されたポスターの展示です。
こちらは無料でした。
二〇〇八年に開催された 『 源氏物語千年紀 』 は行きたかったなぁ、と今でも悔しいです。
千年先までは生きていられません。

6. 最後に

先日、うっかり御朱印帳を買いまして。
美術館にあるはんこを押したら楽しいかなと思っていたので、この日から使い始めました。
いきなり押すのを失敗しましたが、これからゆっくり貯めて行こうと思います。

この日は伊勢丹京都にある美術館 『 えき 』 で開催されている 『 渡辺貞一 』 展と奈良国立博物館の 『 正倉院展 』 に行く予定でした。
正倉院展は開館時間に間に合わなかったので、渡辺貞一展のみ記事を分けて書きます。
渡辺貞一展(当ブログ内リンク)

次の特別展は何だろう。
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